シングルディスク化をしてみました その1

かなり以前からやってみたいと言っていた「フロントブレーキのシングルディスク化」をついに実施しました。
何がきっかけか忘れてしまいましたがRC30/VFR750Rに乗っていた頃から、ブレーキについて色々注文の多い私でした。バイクを乗り継ぐに連れ、知識と経験が増えて行きましたが、RC46/VFR800F(初代)でフロント周りにSC36/VTR1000F用を移植するという大手術をした事で一気に何年分にも相当する経験を得て、パズルのピースが揃い始めました。
またドゥカティに関わるようになったお陰でレース車両を製作するショップとのお付き合いがはじまり、思考実験を経て沢山のピースを手にしました。
結局行き着いた所がシングルディスク化だった訳です。
メリットとしては

  1. バネ下重量の軽減…キャリパー1個+ホース1本とディスク1枚が無くなりますから、当然軽くなります。
    バネ下1kgはバネ上の10kgに相当する効果とも言われますから、軽量化をしてダメという事はありませんよね。
  2. ステアリングが機敏に反応…ディスクが1枚になる為、ディスク自体が発生していたジャイロ効果は半減。
    ジャイロ効果が小さくなればフロントタイヤは車体のバンク角により俊敏に反応するので、「舵角が付き易く、戻りも容易」になります。
  3. メンテナンスコストの削減…パッドは1セットだけになるので通常の半額。ホース全長も短くなるのでフルード使用量が減ります(ちょっとだけど)。
    ついでながら邪魔なディスクが居ないのでホイール中心部まで簡単に手が届くようになります。ダブルディスク車の泣き所でもあるハブ部分の掃除が簡単になります。
    その他エアバルブの向きをディスクと逆に向ければエア調整も簡単。
中々良い事尽くめでしょう?
じゃあデメリットは無いのか?というと、世の中甘くないので、しっかりあります。

  1. パッドとディスクの消耗が激しくなる→交換サイクルが短くなります。
  2. フルードの熱による劣化が激しくなる→交換サイクルが短くなります。
  3. 他にあったっけ?
1.についてはパーツの使用点数が半減しているので、実質ではさほど変わらないでしょう。1ディスク+1キャリパー体制ではパッドの温度上昇も早く平均・最高温度共に高いはずですが、パッド側の好適温度条件に合致すればかえって消耗を遅らせる事ができるかも知れません。ここは要研究ですね。
2.については元々頻繁にエア抜きをしている私には関係ない話です。

「制動力が落ちるのでは?」と疑問に思う方もいるでしょうが、制動力はタイヤと路面の摩擦抵抗限界以上にはならないので、ディスク数だけでは決まりません。レースでの超高速域からの全力制動などの酷使となるとフェードが絡んでくるので、1セット当たりの負荷を減らせる2ディスクが有利と思いますが、125ccレーサー等はシングルディスクなので、利害得失を勘案して決めているのでしょうね。

更に理論武装する(?)為、運動エネルギーという点から見て見ると・・・

運動エネルギー(K)を質量(m)と速度(v)で表した場合

K = mv2

となります。この事からKの値は、mに比例しvの自乗に比例します。
つまりmが2倍なればKも2倍になり、vが2倍になればKは4倍になります。
逆にmが1/2になればKも1/2になり、vが1/2になればKは1/4になります。

※ただし今は同じライダー(私)が同じバイク(1098)に乗るというお話なのでmは一定、Kvの変化によってだけ変化する事になります。

ディスクが半分の1枚になったのでKも半分にするなら、vを71%に落とせば達成(0.71×0.71=0.5041)できますし、50%まで落とせば1/4です(0.5×0.5=0.25)。

2007年4月に富士スピードウェイで行われた1098試乗会では、プロライダーがDDA上の記録ながら「約300km/hからの減速を繰り返しても、まだブレーキに余裕があった」旨の発言をされています。この時の車両はエキゾーストキットのみ組み込みの1098Sでしたから全く同じブレーキシステムを持つ1098もほぼ同等と見て良いでしょう。300km/hを出せるバイクならそれに十分以上に対応できるブレーキの装備が必須となりますし、事実そうであったからこそ「ブレーキに余裕があった」発言だったのでしょう。仮にダブルディスク型1098の最高速度を試乗時に計測された300km/hとするなら、シングルディスク型1098の最高制限速度は(乱暴な計算ながら)300×0.71=213km/hであり、車速を200km/h以下に限定すれば、シングルディスクでも十分に余裕があると言えるでしょう。
・・・て言うか、150km/hですら、出す機会は殆ど無いですよ、私は。

まぁ、堅い話はこれくらいにして、作業にかかります。
前後にメンテスタンドをかけ、車体を安定させます。
1098には専用のフロントアップスタンドがラインアップされていますが、市販の物(画像ではJ-Trip製を使用)でもちょっとした工夫で使用できます。
力点となるアームが短めなので、リフト作業にはちょっと力が要りますが、難しいという程ではありません。リフト動作中は意外とグラグラするのでビビッてしまいますが、リア側がしっかり固定されていれば大丈夫です。

あ、ローラーのグリスアップは忘れずに。リフトアップがし易くなりますよ。またキックボード等に使われている外周が透明なローラーはアスファルト上でもソフトに転がり易くて安心感があります。メーカーからオプションで購入できますから、作業場所の床面が平滑ではない方は検討をお勧めします。

リフトアップが完了したら、フロントアクスルを抜いてフロントホイールを外します(右上の画像)。
ホイールから左のディスクローターを外します。
ここはトルクスボルトなので専用工具が必要です。
ネジロック剤でしっかり固定されているので外すのは大変。私はメンテスタンドをかける前に緩めておきましたが、狭いので使える工具が限定されます。なるべくビット全長が短い物を探しましょう(私はPB製を使用)。
もし外せなかったら素直にプロに相談です。無理をしてボルトがナメたりしたら大変ですから。
めでたく外れたところが右中画像です。
ついでにカラーとダストシールを清掃し、グリスを補充しました。
ホイールハブ周辺は普段から磨いておきましょうね~(見えない所と思って掃除をサボッたツケをしっかり払わされました)。
左キャリパーへの連結ブレーキホースを外します。
右キャリパーのバンジョーボルトを抜き取り、左キャリパーへのホースを外します。ついでマスターシリンダーからのブレーキホースを右キャリパーに固定します。シールワッシャーは新品交換、バンジョーボルトは諸般の事情で更新無し。
右下画像は組み上げた段階で撮影したものですが、バンジョー周辺がとてもすっきりしているのがわかると思います。
ちなみにバンジョーボルト右側には左フォークのブレーキキャリパーブラケットが見えています。見通しの良さがたまりません!
ここまでで改造は完了。後は逆手順で組み上げて行くだけです。


システムの制限でこれ以上書けないので、その2に続きます。

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